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いつも100点満点を求められたのでは、宮崎駿もつらいだろうな。 映像の空間処理と、奥行きの深さは、さらに磨きがかかってきた感じで、絵を見ている分には充分満足できる作品だった。 言われているほど、木村拓哉の出来も悪くはなかったし(本職の声優に比べると、やはりあのこもり気味の声はアニメのキャラに向いているとは言えないが)。 声優陣では、カルシファー(火の悪魔)の我修院達也がいい味だ(今では、彼が、かつて若人あきらと名乗って郷ひろみの物まねをしていたなんて、ほとんど想像もつかないくらいの怪優になっているが)。 さて、肝心の作品そのものだが、全体的に消化不良、といった感じは否めない出来だった。 主人公達の恋物語がメインで、そのバックに戦争が繰り広げられている、という構図なのだが…、その戦争がなぜはじまったのか、敵は誰なのか、ハウルは何のために戦ってきたのか、もうひとつはっきりしないままに話が進められて行くので、最後まで物語全体の世界観が明確にならないで終わってしまうのだ。 また、主人公のソフィーの性格のはっきりした輪郭に比べて、ハウルがどういう育ち方をして何故魔法使いになったのかがほとんど描かれていないため、性格づけもかなり弱い感じがしてしまう。 これは、この物語が、宮崎駿のオリジナルではないせいなのかも知れない。宮崎駿の感性に合った部分と、最後まで調和できなかった部分が未消化なまま世界が構築されてしまったために、何となく中途半端な気持ちを見ている側に抱かせるのではないかと思う。 何度も公開が延期されたのも、そんなジレンマのためではなかったのか? もう少し脚本を練り上げれば(そして、もう少し尺が長ければ)、もっと確かな世界ができ上がったろうにと思うと、もったいない気がする。 面白い、という声から、不満だらけだという声まで、色々耳にするが…(他の監督が撮った作品なら、まあこんなものかという感じで、それほど評価が分かれることもないのだろうが)。 そこが、今まで水準の高い作品を送り出してきた人間のつらいところだろうな。 うん、でも、それほどひどい出来というわけでもないのだよ。
by htmkuromame
| 2004-11-30 07:21
| 極私的映画感
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