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小説版(原作というより、映画製作と同時進行の形で書かれた、ということのようだ)の「終戦のローレライ」(福井晴敏)は、人物造形や設定に多少アニメの色香が感じられるものの(※あとになって作者のプロフィールなどを見て納得したのだが)、なかなか良くできた骨太の海戦、潜水艦小説として面白く読んだ。 さて、映画版「ローレライ」の方だが、小説版と比較しなければ、それなりに頑張ったなという出来ではあった(頑張ったな、という冠がついてしまうところが少し残念なのだけれど)。 まあ、東宝のお家芸の「終戦もの」(少し時期外れの公開ではあるが)と考えれば、合格点といったところだろう。 ただ、小説版では、濃密な人物描写と人間関係の構築で、少しSF味の強い設定や主要な登場人物のひとりの、観念的に過ぎて少し飲み込みにくい「国家としての切腹」という動機づけも、危ういところでバランスをとって物語世界を形作っているのだが、映画の短い時間枠にそれらを盛り込むにはやはり無理があったようだ。 少し上げれば、潜水艦内での反乱場面など、あっさりしすぎているし、主人公の友人の死に方もちょっと気の毒な描き方だった。小説版では、重要な狂言回し的な役割だった人物も登場しないしね。もう少し尺があれば、その辺の物足りなさも解消できたのか? せっかく、小説版とは別立てという趣旨で作るのであれば、もっと映画オリジナルの世界を作ってしまった方が、ストレートに楽しめるものが出来たのかも知れない。 とはいえ、CG、ミチュアワークも、リアルな戦争物に挟み込んでも違和感のないところまで使い方がうまくなったし(潜水艦に比べて、海上艦がときどき「オモチャ」に見えてしまうのはご愛嬌として)、演技陣もなかなかいい出来だった(顔つきが「現代人」なのは、まあ、しかたないのかなあ。第2次大戦中の日本人の顔つきを再現できる役者がどんどんいなくなるの寂しいことだけれど。昔の「連合艦隊」に出ていた頃の中井貴一などは、実に戦中派の顔だったなあ)。 小説版に比べて、逆に映画版の方にほとんどアニメ的な色合いが感じられなかったのは、面白い結果だった。 映画で物足りなかった分は小説でどうぞ、と言ってしまうと、うまく商売に乗せられたということか…? (音楽に関しては、もうひとつ、といった出来だったな) ※映画のパンフレットの中でも、「ガンダム色というのは、一般性を持ちうると思ってるんですよ」と、語っている。だからなのね。
by htmkuromame
| 2005-03-06 10:16
| 極私的映画感
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