|
イラストは、哀愁を帯びた名場面として有名な少女マリアとモンスター(フランケンシュタインというのは、あくまで人造人間を作った博士の名前である。だから、正確には、「フランケンシュタインの怪物」ということになる)の出会いのシーン。 これが、スペイン映画「ミツバチのささやき」のなかで主人公の少女が強い印象を受けた場面だ。 この後、のどかな光景は一転して悲劇へと変るのだが、公開当時は残酷すぎるとしてカットして上映されたそうだ。 メアリー・シェリーの原作ではあるが、映画は、舞台からの影響が大きいそうで、原作の持っていた哲学的な部分は削り取られ、怪物も、言葉もしゃべれぬ野蛮なだけの「怪奇な人造人間」といった色合いが濃くなっている。 だが、展開を追っていくと、殺人鬼の脳みそを入れられてしまったとはいえ、「生まれたばかり」の彼は、そう凶暴な性格を持っていたわけではない。 彼が暴れだすきっかけは、彼以上に性格がゆがんでいるとしか思えないフランケンシュタイン博士の助手の男の、執拗な虐待のせいなのだ。 幽閉されていた怪物は、ついにその助手を殺し、そのためにフランケンシュタイン博士の師の手によって解剖されることとなるが、逆に彼を殺して逃走してしまう。 そこで、マリアと出会うことになるのだが、少女に対する残酷な仕打ちは、「悪意をもって」というより、むしろはずみでやってしまった、という感じに描かれている。 この辺りは、多少原作の持っているものを残していると見るべきなのだろう。 怪物は、そののちフランケンシュタイン博士(コリン・クライブ)と恋人エリザベス(メイ・クラーク)の結婚式に乗り込んで花嫁を襲ったのち、山のなかへと逃げてゆく。 マリアの死を知った村人達は、怪物の追跡を開始するのだが、そもそも、この悲劇を引き起こしたもとになったのは、フランケンシュタイン博士の「神の意に背いて命を作り出そう」というそれこそ神をも恐れぬ異常な研究(と、あくまでキリスト教的な色彩が前面に打ち出されているのだが)のせいなので、博士も何とか自分の手で怪物を倒さねばと、山の上まで追いつめることになる。だがしかし、敵もさるもの、逆に博士は倒されて風車小屋に連れ込まれ、あわやというとき…。 まあ、ネタばれというほどのことでもないので書いてしまうと、結局怪物は風車小屋ごと炎に包まれておしまいとなるわけなのだが、この後のほんとのラストで、「唖然とする」展開が待っている。 公開当時の人々にとっては、あれで「めでたしめでたし」ハッピー・エンドという締め方なのではあろうが…。 え?いや、そこばかりは、ご自分でご覧になってくだされ。 今の感覚で見たら、ホラーというほどの恐さはなく、やはりSFの元祖と目される原作を元にしたお話ではあるな、という感じではある。
by htmkuromame
| 2005-07-28 21:58
| 極私的映画感
|
ファン申請 |
||