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陥落寸前のベルリンの要塞に立てこもりながら、次第に妄想的な勝利の計画に取りつかれてゆくヒトラーを、ブルーノ・ガンツが熱演している。 ヒトラーの人間味を美化し過ぎだという批判もあるようだが、スクリーンの中に描出される彼の狂気と冷酷さとふと垣間見せる人間的弱さは、それほど美化されたものには映らない。 むしろ、人間の持つどうしようもない業のようなものが、ヒトラーという人間の中に凝縮されて、それがまわりの人間をもむしばんでいった様が、くっきりと浮き彫りにされてくる。 映画の中で、ヒトラーや彼の信奉者たちが、しばしば、 「国民がどうなろうと知ったことではない。 こうなることを選んだのは彼ら自身なのだからな」 といった意味合いのことを口にする。 そう、確かに彼は、最初は民主的な選挙で国民によって選ばれ、熱狂的な支持を受けた「リーダー」だったのだ。 それを見ながら、どこぞの国の政界の様が、この映画の下手くそなパロディーのように思えてきて、なにかうそ寒いものを背中に感じてしまった。 ヒトラーが死んでからが、少しだらだらと長い気もしたが、戦争の持つ愚かしさと狂気をきっちりと描き出してみせている(やはり負の遺産をきっちりと見据えるだけの覚悟がないと、これだけの映画は作れないのだろうな)。
by htmkuromame
| 2005-10-31 18:16
| 極私的映画感
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