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1944に作られた作品だが、驚くほど戦時色がない(登場人物のひとりが、戦場に出かけるというエピソードがちらりと出てくるが)。 むしろ、戦争などとは無関係の、ヒューマニズムに溢れた物語だ(主人公が、神父ということもあるけれど)。 若い神父のオマリー(ビング・クロスビー)は、ニューヨークの借金であすをも知れぬ教会の建て直しにやって来る。 その教会を守っているのは、45年前にそれを自ら建てたフィッツギボン神父(ハリー・フィッツジェラルド)だ。 歌手志望の家出娘に味方したり、不良少年たちを集めて、歌の楽しさを教えて聖歌隊を作ったりする、若いオマリーの型破りなやり方に承服できないフィッツギボンは、彼を辞めさせてくれるよう、司教に頼みに行くのだが…。 オマリーは、「作曲家になるか、我が道を往くか」悩んで、「我が道を往く」ことを選んだ人間。「我が道を往く」というのは、「神に仕え、人のために生きる道を往く」ということだ。 どこぞの国の政治家のように、自分勝手に「我が道を行く」のとは、正反対の生き方である。 今でこそ、こんなほのぼのとした人情劇は、理想主義の夢物語のように見えてしまうけれど、こんな風に素朴に人間を信じられる世界がまた戻ってくることを願うのに、何の遠慮があろう。 理想や夢を語る人間を揶揄するのが、かっこうのいい大人だと勘違いしている人間が増えてきているけれど、夢見る力を失った人間に、何の魅力があるというのだ? こんなご時世だからこそ、見て欲しい作品である。
by htmkuromame
| 2004-07-29 10:33
| 極私的映画感
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